5月1日に皇太子殿下が即位されると、
同じ瞬間に秋篠宮殿下が「皇嗣」となられる。皇太子というお立場と皇嗣はどう違うか。皇太子は次の天皇になられるべき方。その地位は揺るぎないし、揺るがしてはならない。ところが、皇嗣はやや違う。たまたま、その時点で皇位継承順位が第1位であるに過ぎない。例えば、昭和天皇の弟宮だった秩父宮の場合。昭和天皇が即位されて、内親王が続けてお生まれになった。天皇に男子がお生まれになるまでの間、皇位継承順位の第1位は秩父宮だった。つまりその間、秩父宮は「皇嗣(儲嗣)」であられた。しかし、今上陛下がお生まれになった瞬間、皇嗣の立場を離れられた。言うまでもなく、今上陛下がご誕生の瞬間に「皇太子」となられたからだ。皇嗣という立場の相対性、不安定さがよく分かるだろう。従って、普通、「立太子礼」はあり得ても、巡り合わせでその立場になったのを“こと改めて”公示する、「立皇嗣礼」などという儀礼は考えられない。今の制度のままでも、理論的な仮定として新しい天皇にもし男子がお生まれになったら、その瞬間に秋篠宮殿下は皇嗣ではなくなる。恐らく首相官邸の役人は、「立太子礼」の前例があるから、歴史的な知識もなく、深く考えもしないで、
惰性的に「立皇嗣礼」なる前代未聞の儀礼をひねり出した
のではないか。来年4月に挙行が予定されている。それは客観的には、政府がもはや直系の男子が生まれないと一方的に認定するという、
非礼な意味以外は持ち得ない。